膝関節疾患

膝関節疾患について

代表的な膝関節疾患にはスポーツなどにより生じる場合や加齢に伴い生じる場合があり、それぞれ特徴があります。

どちらも症状をふまえてリハビリ加療などの保存加療を第一に考えて対応します。ただし疾患や状態によっては手術加療をした方が、早期のスポーツ・社会復帰が可能になる場合や疼痛改善の期待が大きい場合は手術加療を行う場合があります。

  • 外来診療で多い膝疾患

    半月板断裂/軟骨損傷/前十字靭帯断裂 ※スポーツ疾患の場合が多い

  • 加齢による変性疾患

    半月板損傷(変性によるもの)/特発性大腿骨内顆骨壊死/変形性膝関節症

①半月板断裂

半月板は大腿骨と脛骨の間にある組織で、膝の安定性に寄与する重要なものです。スポーツでは外傷により生じるものが多く、様々な断裂様式を呈します。断裂部位や程度によっては治癒しやすい場合もあり、その際は保存加療で対応します。

 

一方、症状改善が乏しい場合や断裂形態によっては手術加療(半月板切除・縫合術)が必要になります。若年層に半月板切除を安易に行うと、半月板が有する荷重分散機能や安定性の低下をきたすため、将来的に軟骨損傷を引き起こすリスクが高まります。10年後の単純X線像で半月板切除を行うと関節症性変化が約3割に認めたとの報告もあります。そのため若年層では基本的に半月板温存を行うことが重要です。しかし断裂形態によっては縫合術を行っても治癒しにくい場合もあります。

当院ではできるだけ治癒しやすいように、従来は切除術で対応されていた治癒しにくい断裂形態の症例(フラップ状断裂、水平断裂)に対して、フィブリンクロットを断裂部位に挿入して縫合術を行います。

 

フィブリンクロットとは、簡単に言うと断裂した半月板同士の接着因子として作用し半月板治癒に役立ちます。これは採血により患者様自身の血液から手術中に作成します。ただしフィブリンクロットを用いても治癒が難しい場合があります。それは加齢により半月板自体が傷んでいる場合です。当院では年齢やスポーツ早期復帰希望の有無、断裂形態、断裂部位において半月板縫合術適応を判断します。

入院期間は数日-1週間で対応可能です。

②軟骨疾患

膝関節軟骨疾患において離断性骨軟骨炎や軟骨損傷があります。その場合、重症度や範囲に応じて様々な治療が必要になります。

 

離断性骨軟骨炎ではその重症度に応じて保存加療か手術加療かを判断します。手術加療の適応と判断された場合、軟骨の安定性に応じて術式が判断されます。不安定性が軽度の場合は、ドリリングと吸収ピンを併用した骨軟骨固定術を行い骨軟骨安定性が得られるようにします。一方で骨軟骨病変部の不安定性が高度な場合は、健常部分の骨軟骨柱を病変部位に移植する骨軟骨柱移植術(モザイクプラスティー)を行います。スポーツ復帰は術式により異なります。前者では約4か月、後者は約6か月かかります(範囲や部位によって変更になる場合があります)。

 

軟骨損傷に関しては程度と範囲が重要となります。手術加療で対応可能な場合は上述の手術術式があげられます。一方、軟骨損傷の程度が重度かつ広範囲の場合は自家培養軟骨移植術が適応となります。これは原則、加齢による軟骨損傷には適応となりません。また適応施設は病院単位になるため、当クリニックでは培養軟骨移植術は施行できません。もし培養軟骨移植術の適応がある場合は近隣の関連施設へ紹介させていただきます。

③前十字靭帯断裂

前十字靭帯は膝関節を安定させるために重要な靭帯です。その靭帯が断裂してしまうと、膝が不安定性になりスポーツでのパフォーマンス低下が生じるため、スポーツ継続を希望される方は基本的に手術加療が必要になります。保存加療で対応した場合、日常生活動作程度であれば、たまに不安定感を自覚する程度で症状は落ち着きますが、中・長期的には下記に記載するように半月板損傷・軟骨損傷も合併し変形性膝関節症に進行してしまう危険性が高くなります。

 

当院では、主に2つの再建方法で前十字靭帯再建術を施行しています。

(再建術:別の組織を用いて断裂した靭帯の代用すること)

 

どちらの方法を用いるかは患者様の年齢・性別やスポーツ特性・復帰時期などをふまえて決定します。この手術は大腿骨・脛骨に骨孔(靭帯が通るための穴)を作製し、そこに再建靭帯を通してそれぞれの骨に固定材料を用いて固定する手術です。

2つの方法は以下のメリット・デメリットがあります。

  • 正常ACL

    正常ACL

  • 断裂したACL

    断裂したACL

  • 半腱様筋腱(ST)/薄筋腱(G)を使用した(解剖学的)靭帯再建術

    膝を深く曲げるときに作用する腱(ST/G)を再建靭帯に用いて手術を行います。

    メリットとしては膝の重要な筋である大腿四頭筋に直接影響を与えないため、術後に筋力が低下しにくい点があります。デメリットとしては再建材料である腱成分と骨との安定化には少なくとも12か月はかかるため、通常スポーツ完全復帰時期は約12か月を目安にします。

     

    メリット デメリット
    ・術後、筋力が低下しにくい ・腱成分と骨が安定するまで時間がかかる

    ・少なくとも12ヶ月

    (スポーツ完全復帰時期の目安は:約12ヶ月)

     

  • 長方形型骨孔を用いたBTB再建術

    BTBとはBone(膝蓋骨)-Tendon(膝蓋腱)-Bone(脛骨)の略で、腱のみを用いるST/G法と最も異なるのは再建材料の両端に骨があることです。前述したように骨の穴に再建靭帯を通す手術であるため、両端に骨があると骨の内で骨癒合することで再建靭帯が早期に安定することができます。そのためスポーツ完全復帰が約8か月となります。デメリットとしては膝の前面から再建靭帯を採取しているので、膝前面痛が生じやすくなることや大腿四頭筋の筋力低下が起こりやすいことがあげられ、リハビリ加療での上記対応が早期復帰には重要になります。

    当院の工夫としては骨の穴の形と再建靭帯の骨部分をともに長方形に形成して行うことです。それにより再建靭帯が骨の内でより安定することでき、さらに前十字靭帯本来の形態・走行を再現できます。

     

    メリット デメリット
    ・再建靭帯が早期に安定する

    ・スポーツ完全復帰が約8か月

    ・膝前面痛が生じやすくなる

    ・大腿四頭筋の筋力低下が起こりやすい

     

クリニックでは上記方法を競技特性もふまえてどちらで行うか希望に添いながら決定します。入院期間は約1週間前後です。

長方形骨孔による再建術の1例

靭帯の骨性部分が長方形に作成した大腿骨骨孔の中で安定しているのがわかります。
これにより骨孔内での靭帯の安定性を獲得することができます。

④変形性膝関節症

●膝関節の変形が軽度であり、骨温存が可能な場合
高位脛骨骨切り術もしくは半分だけの人工関節である単顆型人工膝置換術の適応。

●膝関節の変形が高度となり、痛みが日常生活動作に支障をきたす場合
人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)の適応

 

当院ではどちらも対応可能ですが、特徴的なのが人工膝関節置換術となります。当院ではナビゲーション支援下(Exactech社 ExachtechGPS使用)で手術を行います。

人工関節センターや大学病院などの病院では採用されていることがありますが、ナビゲーション支援で人工膝関節置換術を行っているクリニックは全国的にもあまりないのではないかと思います。

 

ナビゲーション支援下で手術を行うメリットは患者様個人にあわせた膝の形にするために術前に計画した骨切り量や角度を、手術中にナビゲーションを用いて確認しながら進めていくことが可能となります。その結果、術前計画した通りに正確に手術を行うことができます。

 

また術後の痛みを少なくするために、クリニックでは人工股関節置換術と同様にカクテル注射を用いています。患者様の術後経過からみても、とても鎮痛効果の高い方法です。それにより術後早期からのリハビリ加療が開始でき、血栓症などの合併症の予防にもつながります。

 

入院期間は約2週間です。

 

ナビゲーション支援下での人工膝関節置換術

人工膝関節置換術の術前・術後レントゲン

  • 術前

    術前

  • 術後

    術後

Medical treatment time

診療時間

※下記の表は横にスクロールします。

  • 整形外科診療開始時間

    錦 野 午前 9:00 9:00 9:00 / 9:00 9:00
    午後 15:00 15:00 / / 15:00 14:00

    【注意】

    • ・午前の初診受付は10時まで(水曜日のみ9時)
    • ・午後の初診受付:月)18時、火)・金)17時、土)15時となります
    • ・土曜午後の診療は夜間・早朝等加算(50点)対象となります

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  • 内科・外科診療開始時間

    錦 野(院長)
    • 肛門外科
    午前 9:00 9:00 手術日 内視鏡 9:00 9:00
    (第1・3・5のみ)
    午後 15:00 15:00 訪問診療/予約外来 訪問診療 15:00 14:00
    (第1・3・5のみ)
    熊 谷
    • 内科
    • 腎臓内科
    午前 / 10:00 10:00 / 10:00 9:30
    (第2・4のみ)
    午後 / 訪問診療 15:00 / / /

    【注意】
    午前の初診受付は10時まで
    午後の初診受付は17時まで(土曜日は14時まで)
    ※水曜・木曜日は予約患者のみ。
    ※初診の方の電話予約は受付しておりません。直接ご来院下さい。
    検査の進行状況によって診療開始時間を変更させていただく場合があります。
    診療内容によって順番が前後することがあります。
    予約外来・よろず相談外来は予約の方のみの診療となります。
    土曜日の午後の診療は夜間・早朝等加算(50点)を算定します。

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